不動産の所有者について

   

フロントオフィスのシュウトウです。

本州より一足早く、北海道はすでに秋の空気になってきました。
あっという間に冬になっちゃいます。あぁ残念。

さて、今回は少しまじめに不動産の話。
今更ながら、不動産を所有すること(所有権)とその表示制度(登記制度)について、ちょっと思うところがあり書きます。

不動産の売買では必ず登記をしますね。
売買で所有者が変わる場合は「所有権移転」という権利の登記をします。
国の不動産台帳に「どこどこの不動産の所有権者」として住所・氏名を記載してもらう制度です。

これ、国が所有権を保証してくれている、と思いませんか?

ところが、登記にはそのような効果はありません。
一般には勘違いされることも多いのですが、登記自体はその不動産について所有権がある、ということについて何ら保証してくれるものではありません。
なぜなら権利に関する登記は当事者の任意で、不動産登記簿には真の所有者が記載されているとは限らないから。

例えば、亡くなった父親が持っていた自宅(土地・建物)を息子が単独で相続したが登記名義は変えていないケース。
登記されている所有権者=真の所有者ではない、ありがちな事例です。

もし「登記は信用できる」っていうことにしてしまうと、

 登記名義人の父親の名を騙るまったくの別人が登記を信じたまっとうな第三者にその不動産を売却
    ↓
 第三者は登記を信じたのだから正当。所有者として所有権移転登記を受けてOK
    ↓
 真の所有者は登記を備えた第三者。息子は出ていけ

みたいなことになります。

任意とはいえちゃんと登記しなかった息子が悪い、という理由で、そもそも詐欺的な取引を国が認めることになり兼ねないわけです。
さすがにそれはまずいので、国としては、権利に関する登記は任意であり、登記による権利の保証はしないということにしているのです。
つまり登記を信じて取引しても権利は守られない、専門的には「登記には公信力がない」と言います。

では、なぜに登記をするのかというと、登記を備えていることでその権利を主張できるから。

民法177条には『不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。』とあります。

ざっくり言えば、権利の主張ができなくても良ければ登記不要だけど、(まっとうな)第三者との間で争いが起きた場合は登記を受けてないと負けるよ、ということです。
専門的には「登記には対抗力がある」と言います。

さてさて、権利と登記の関係についてはこの辺にして、何が気になっているのかというと「実際問題、不動産の所有者が分からなくならない?」ってことなのです。

事実、所有者不明土地という問題が起きていて、国もようやく対策制度の方向性について検討を始めたようですが、今更感が否めません。

>>> 「所有者不明土地問題に関する制度の方向性等について検討を開始します ~国土審議会土地政策分科会第1回特別部会の開催~」(国土交通省ホームページより)

先程の事例のように相続に絡んで所有者不明になるケースはこれまでも多くあり、国もさらなる人口減少や超高齢社会に向けてその辺りを射程に捉えているようですが、それ以上に個人的に気になるのは海外居住者による取得というケース。

海外にいる人が持ったまま所在不明になったら買いたい人は所有者を探すことが物理的に難しくなりますし、海外で国内法的に不適切に転売され、さらにそれが悪質な取引だった場合にはもはや民間人でどうなるレベルではなくなります。
後者の場合は登記云々というより取引の規制に関する問題かとは思いますが、しかしこれからますます資本や人の動きがボーダレスになるにしたがって不動産の所有者不明問題は増加し、またその対策は現行制度では追いつかなくなる気がします。

不動産の登記上の所有者住所が国外で、しかもそれがすでに使用されていない住所だったとき(あるいは、真の所有者が変わっていたとき)、どうやって所有者を探せば良いのでしょうか?
もし何らかトラブルが起きても対応には限界があります。

不動産は一般的に資産価値が高く、しかも周辺環境に影響して価値が変動します。
国内不動産の適正な運用と管理のためには、個人のプライバシーは保護しつつ、より容易に真の所有者を特定できる、または所有権の移転などを正確に把握できる制度への移行は、むしろ喫緊の課題なのではないかと思います。

 - 1F 第1営業部