消費税のはなし・番外編(固定資産税・都市計画税の清算)

   

こんにちは、シュウトウです。

消費税が増税されて2か月が経ちました。
消費動向が気になるところですが、25%の増税(”税率”は+2%ですが、”増加率”は+25%)自体もさることながら、増税に合わせた値上げも目立つので、消費者側からはそのインパクトもあるように思います。
金融緩和による偽装インフレでここ数年物価は上昇傾向ですから、「収入<生活費」となってしまう家庭が増えてきている可能性があります。

さて、そんな消費税についてですが、少し前に不動産売買との関連を前・後2回に渡ってお話しました。

>>> 「消費税のはなし・前編(課税と納税義務)」

>>> 「消費税のはなし・後編(重要事項説明における消費税)」

消費税の仕組みは本当に難解で、わざと複雑にしているのではないかと疑われるほどです(今回の軽減税率制度もそうですが)。
個人的には消費税と所得税を一体にした抜本的な改革が必要だと考えていますが、その話は長くなるのでここでは控えます。(苦笑)

代わりと言っては何ですが、今回は「番外編」として、不動産売買時の固定資産税・都市計画税(以下「固都税」といいます)の取扱いについてご説明します。
実はこれも消費税との関係で非常に分かりにくいルールになっています。

不動産を売買したことのある方でしたらなんとなく覚えがあるかと思いますが、不動産の売買では、一般的に不動産代金の支払いのほかに、その年の固都税についても清算します。
固都税はその年の1月1日現在の不動産の所有者に対して課税される地方税なので、通常は売主に1年分の請求がされていますが、これを不動産の引渡日を境に日割りをして、買主が負担すべき分を売主に支払って清算する、ということを売買上の慣習として行っているのです。

余談ですが、関東圏では前述の課税方法に着目して1月1日を起算日とします(1月1日~12月31日の一年分)。
北海道もこのやり方です。
一方、東海~関西圏では「年度」ということに重きを置いて4月1日を起算日として取り扱うことが多いようです。

具体的に見てみましょう。

※年間税額 合計:36万5000円(土地:10万円+建物:26万5000円)
※起算日 2019年1月1日
※引渡日 2019年4月11日(1月1日から101日目)
※負担特約 引渡日前日までを売主、引渡日以降を買主が負担する

このように設定した場合、売主が36万5000円を納税することになりますが、売買上の清算手続きで以下のように按分します。

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<売主負担>
36万5000円×100日(引渡日前日までの日数)÷365日=10万円

<買主負担>
36万5000円×265日(引渡日以降の日数)÷365日=26万5000円

※小数点以下四捨五入

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特に問題はないと思います。

ただし、ここからが本題。

もし、売主が消費税課税事業者の場合で、固都税清算に関する特別な特約をしていなかったとき、買主の負担は次のようになります。

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<買主負担>
土地分 10万円×265日÷365日=7万2603円
建物分 (26万5000円×265日÷365日)×1.1=21万1636円

合計 28万4239円

※小数点以下四捨五入。ただし、消費税計算に関しては小数点以下切捨て

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なんと、建物分について消費税が徴収されるんです。
事例では1万9239円余計に支払う必要があります。

いくら売主が消費税課税事業者とはいえ、そもそも固都税という税金の負担の話なんですから「税金の支払いに消費税はおかしいじゃないか」と思ったあなた、私も同感です。

しかし、そうはなっていないのです。
考え方が違うんだそうです。

国税庁のサイトには、次のような説明がされています。

不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります(基通10-1-6)。

>>> 国税庁|未経過固定資産税等の取扱い

この説明、不動産取引の現場感覚でいえばかなり違和感があります。
一般的に固都税清算について「利益調整のための金銭の授受」であるとか「対価の一部を構成する」という前提で、取引条件が調整されること(すなわち、価格が決定されること)はほぼありません。
固都税清算金は、あくまで売主と買主が一体となってその不動産にかかる固都税を支払うことを目的として授受されているに過ぎない、というのが通常の発想だと思います。
つまり、売主からしてみたら「自分のものじゃなくなった期間の税金まで負担するのは変だよね」という感覚があるのは当然で、また、もし清算しないとすると当事者間に売買の時期による損得が生じることになるわけで、極めて不合理です。
だから、当事者で負担按分してるだけ、というのが実情です。

しかし、これが決まりなんです。

上記の事例だと、売主は売買の対価の一部として固都税清算金を受け取ったことになりますので、消費税が課税される(ただし、建物部分のみ)ため、買主にその請求ができるということです。
もちろん、当事者間の特約によって「買主は消費税相当額は支払わない(=内税として支払う)」とすることもできますが、結局のところ、買主が負担するのか、売主が負担するのかの違いであって、消費税は課税されるし、納税はしなければなりません。
実態として固都税を払う原資である以上、二重課税のような気がしますけどね。

ちなみに、固都税以外にも売買上の清算として買主が売主に支払う金銭については、すべてこの考え方が当てはまるので注意が必要です。

いつになく不満タラタラの解説でしたが、思わぬ消費税トラップがありますよ、というお話でした。
言うまでもなく、租税回避は重罪です。
ですが、不動産売買を原因として固都税が滞納されることのないように負担按分を考慮しているのに、その清算金にまで消費税を課税するなんておかしいですし、こんな分かりにくい制度になっているのも本当にどうかと思います。
やっぱり抜本的な税制改革が必要でしょうね。

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